time~元暴走族豊×キャバ嬢カナ~

明美がこうなったら、もう誰にも求められない。


住所を調べるために、半ば強引に明美との電話を切った。


「友達かい?これはここの住所。」


「はい……。ありがとう。」


きっと電話口から明美の声が漏れていたんだろう。


浅葱はあたしに住所が書かれた紙切れを渡してくれる。



「住所教えてあげなくていいのかい?」


ソファーに腰を降ろしながら何故かテレビをつける浅葱。



「住所教えたら今すぐに飛んでくると思うから……。」


「いいじゃないか。テレビもばっちりだ。」


そう言って立ち上がった浅葱はあたしの頭に手を乗せた。


「僕はこれから仕事なんだ。だから、ゆめかちゃんは友達と楽しく過ごしていて。」


「えっ?……はい。」


てっきり今日は引越し祝い的な事をするのかと思っていたけど、平日だもの仕事があったって普通だよね…――


あたしは玄関へ向かう浅葱の後に続き、見送りをした。



「いってらっしゃい。」


「いいね。こういうの。行ってくるよ。」



バタン



重そうな扉が大きな音を鳴らしながら閉まる。