「店長。今日でお店やめます。お世話になりました」


お世話になったなんて、これっぽっちも思っていない店長に頭を下げた。


「おい。待て。ゆめか。そんな急に何を言ってる?引き抜きか?」


あたし達みたいに自分の体を商品にして働いている子達がお店をやめる時、それは新しい男ができたか、もっと稼げるお店を見つけたか、どちらかに限られる。


殆どの子達が後者だけど、あたしの場合は前者でも後者でもない。


どちらも違うし、どちらも正しいって感じかな…――



「引き抜きじゃありません。この世界から足を洗おうと思って」


「そうか。なら、引き止めても無駄だな。今日までの給料は今出してやるから持って行け」


「ありがとうございます」


店長はあたしを前者だと思ったらしい。


そうなればなんと説得しようが無駄な事は一目瞭然。


恋に溺れている女たちが盲目な事を店長だってわきまえている。