「お前の可愛いお姫様がウチで涙を流してるけど?」
「明美になんかあったのか?」
「それは自分で聞け」
あたしはそう言うと電話を切った。
きっと、秀は慌ててここに駆けつけるだろう。
「秀ちゃん、なんて?」と明美は首をかしげている。
大丈夫だよ、明美。
秀はお前の事を思ってる。
どこにいたのかは知らないけど、今頃血相を変えてここに向かっているはず。
ピンポーン
ほらね。
「開いてる!!」
あたしはさっきのように玄関に向かって叫んだ。
「明美!!」
すると慌てすぎて靴を脱ぎ忘れた秀があたし達の前に現われた。
「秀ちゃん……」
涙を流す明美を抱きしめる秀。
「その続きは帰ってからやってくれ」
あたしは抱き合う2人の肩を叩き、冷蔵庫を開けた。