うまく説明できないけど……
文ちゃんは踏み込むときにも一定の距離をとってくれるんだ。
それがあたしにとっては丁度いい。
「これね」
煙草を持つ手を顔に近づけ、副流煙の匂いをかいだ。
目を閉じると隣に豊がいるようだ。
「今でも大切だから、手放せないんだろ?」
「自分でもよくわからない。忘れたい過去がある。でも、あの頃のあたしがなければ、今を頑張れていないと思う。だからあたしは過去を忘れようとしながら過去に取り付かれているんだ」
自分の気持ちを誰かに話すのは初めてだった。
3年前のあの日から、心の中を隠して生きてきた。
言葉にしてしまえば迷ってしまうかもしれなかったから……
でも、今日は自然と言葉になっていた。
あたしの心を文ちゃんに聞いて欲しいと思った。


