叫べ、叫べ、大きく叫べ!


暗がりからぼんやりと見える天井の波模様。


視線を少し外せば壁にかかった時計が見えた。時刻は21時30分。


未だに栞那とのあの楽しい時間を恋しく思う。

けれどこうもしていられなくて。


気持ちを切り替えるみたいに深呼吸をした。


それにしても、今日は色々と疲れた。


都波といい、家のことといい、沢山の事が積み重なりすぎて感情がごちゃごちゃだ。


……初めてだった。キスなんて。それに『好き』という真っ直ぐな言葉。

私には一生、縁のないものだと思っていたから。


そっと口元に手を当てる。


あの感覚はもう残ってないけど、目を閉じた都波がゆっくり私から離れていくその映像はハッキリと思い出せて、困ったように笑った顔に胸の奥が締めつけられた。



『ごめんね。こうするつもりなんてなかったんだけど……でも、分かってもらいたかったから』


そう言って彼は『またね』と去って行った。


私はただ遠くなっていく彼を見つめるだけで、夢でも見ているような、そんな気持ちのまま家に入って、


だけど、次に待ち受けていたのは朝にかかってきた電話の内容だった。


当然、中は真っ暗。


一気に現実に引き戻されたことにやっぱりさっきのは夢なんじゃないかって思おうとしたけど、


まだその時は彼の甘い香りが近くに感じていて、ほんのり柔らかい感覚もあって。