叫べ、叫べ、大きく叫べ!


「ここまでで大丈夫だから。ありがとう。じゃあね」


踵を返して歩きだす。


一目見た彼の顔が妙に脳裏にこびりついて癪に障った。


露骨に拒絶されたからだろう。
今まで見てきた中で一番と言っていいほどの悲しそうな顔。


それもそうだ。そこら中に響かせるほどの声を出したのは久しぶりのようで初めてだった。


でもこれでいい。
彼には、彼だけじゃない、誰にもこの家は見てほしくない。


こんな嘘つきだらけの家。
全然幸せなんかじゃない表面のいい家。


華やかに見えて中は空っぽ。ブラックホールみたいな、何もかも吸い込まれてしまうそんな家を前にして、深呼吸した。



「ふーん、ここが夏澄ちゃん家か」

「――!?」

「あは、ついてきちゃった!にしても可愛い家だね。大きいし、」

「な、なんで……」


なんで、都波がいるの。
しかも『ついてきちゃった!』じゃないよ。
なに、してんの……。



「なんでここまで私に付きまとうの?私さっき『いい』って言ってたの聞こえなかった?聞こえてたよね?なんで――」


言葉が奪われた。それは突然に。予知する隙もなく。


甘い香りが離れたすきに鼻腔を刺激して。
見上げた先には、困ったように笑っている都波がいて。



「俺がこんなに夏澄ちゃんに付きまとう理由なんて1つしかないよ」


またふわりと笑ったかと思えば、彼の素直な気持ちが降ってきた。



「好きだからだよ。夏澄ちゃんのことが」