叫べ、叫べ、大きく叫べ!


母の気分の切り替わりは予想不可能だから、こういう貴重な母の扱いには私たちも今以上に気を遣わなければならない。


こんな親子なんて絶対にここしかいないと思う。


親の気分を毎日伺いながら過ごすなんて普通だったら有り得ないでしょう。


有り得ないことを私たちは今までやってきてる。


変に思われても、これが私の家族。
普通じゃない不気味な家族。



「ご飯おかわりする?」


その声にハッとして時計を見た。



「ううん。もう時間だから行くね。ごちそうさま」


そう言うと、母は立ち上がって私と一緒に玄関へ足を運んだ。


久しぶりすぎる見送りにむずかゆくなった。

喜んでるんじゃない。奇妙すぎて。


時間なんてただの口実だ。

早くあの空気(ばしょ)から出たかっただけ。


母の気分が良くてもやっぱり耐えられなかった。自分の顔が。


どんどん表情筋が引き攣っていくのがバレそうだったから。



『逃げるが勝ち』を私は選んだ。


高い空を見上げると雲がいっぱいで、馴染みのある町の空気がおいしく感じた。