「夏澄、変わったな」

「そうかな。変わってなんかないよ。私はずっと私のままだよ。これが本当の私なんだよ」

「かっこいいな。そうだな。夏澄はずっと夏澄のままだ。俺も俺のままだ」


サラリとなびく彼の黒髪はこの夜に溶け込んでしまいそうだ。

前を見据えた瞳はとても綺麗で見惚れてしまう。それは彼の横顔にも。



「好きだよ千木良くん」

「俺も好き。だから、────」


彼は煌めくセカイに叫んだ。


それはお願いなのか、それともただの指摘なのか分からない可愛い要望に笑った。


ああ、好きだなぁ。彼の全てが愛おしい。


もうどこにも行かないで。私の傍で、隣で、その笑顔を見せて。

そのくらいしてもらわないと許さないんだから。待っていた分を取り戻すくらいには何がなんでも私のワガママだって聞いてもらうんだから。


覚悟してよね。



「夏澄、黙ってないで早く。まさか、今更恥ずかしがって、」

「まさか! ちょっとくらい心の準備ってもの用意してたっていいでしょう。 ……名前呼んで欲しいんでしょ」

「あの時は必死に呼んでくれてたのに?」

「もうっ!あの時はあの時!今は違うのっ」


はー……まったく。急かさないでよね!



繋いだ手をギュッと握りしめて、心のままに彼の名前を大きく叫んだ────。


それはもうとびきりの愛言葉を添えて。









【叫べ、叫べ、大きく叫べ!】fine.