叫べ、叫べ、大きく叫べ!


振り向くと俯いた文香が立ち上がっていた。



「なんでこうなっちゃうの!!!!」


それだけ言うと教室を飛び出して行ってしまって、その後を皐月が追って行く。

取り残された私たちだけに変な空気が漂う。


ぎこちなく口を開いた真田くんが皐月たちを探してくると教室を飛び出して、更に空気が重くなった。


なにこれ。なんなの。文香のセリフそのまま私が言うやつだよ。なんでこうなっちゃうの。



「園田、ごめん」

切なげな声に俯いた顔を上げた。

糸口くんは私の肩に軽く触れると彼もまた3人を追って出て行ってしまった。


……なにこれ。私は何を見せられているの。

それに糸口くんは都波になにか誘導している……?

だってさっき出ていく前に聞こえた。
小さな声で「いい加減前に進めよ」と。


2人だけの合言葉なのだろう。
何かの合図なのかもしれない。

そんなことに頭を悩ませる必要なんてないはずなのに目の前の都波の表情があまりにも力無くて。



「都波のせいでみんなどっか行っちゃったよ」


チラリと目線を上げれば目が合った。彼は認めたように小刻みに頷く。


積み重なったどんよりとした空間に開放してある窓から涼しげな風が入って、ほんの少し身が軽くなる。


ストンとその場にしゃがんだ都波は小さく唸った。私はそれに眉をひそめてしまう。


私の方が唸りたいくらいなんだけどな。
だってこんな事になるなんて思わなかったし、大体なんで私に隠し事なんてしているんだろう。


だとしたら、ここへ来るってこともみんな知ってたってこと?


……わっかんない。


まだしゃがんでる彼はなにやらブツブツと言っているようだけど言葉は聞こえない。ただ何かと葛藤してるっぽい。

声をかけたところで返ってこなさそうだこの感じ。


こうしている間も刻々と過ぎていくばかりだし、早く病院へ行って千木良くんに会いに行きたい。



「じゃ、私行く、──っ」

「まって夏澄ちゃんっ」


これで何度目だろう。手を握られたのは。てか握力強すぎ。

そしてそろそろ限界かも。



「もう何!? てか痛いしっ。都波がいけないんだよ。こうなったの。さっきからずっと変。幼稚すぎるよ!?」

「それはごめんって」

「『ごめん』じゃないよ!どうしてくれんの!?みんな何か私に隠してる。そう仕向けたのは都波なんでしょ?なんなの!?何がしたいの私に!」


口を開けば出てくるものは棘のあることばかり。

喧嘩するためにここに来たわけじゃないのに。
怒りたくて来たわけじゃないのに。
ただみんなと一緒に笑っていたかっただけなのに……。


ぽろりと机に零れ落ちた透明な雫は綺麗に小さな円を作った。