叫べ、叫べ、大きく叫べ!


それからは文香と皐月を囲むように集まって当時を振り返ったり、黒板に文字を綴ったり、癖のある先生の文字の書き方とか、当時の流行ったキャラクターとか、あらゆる思い出に花を咲かせた。



「てかさ、雅が生徒会長って聞いたときめっちゃびっくりしたよね!?」

「ねーっ。いくら人気あるからって生徒会長はさすがにねぇ」

「俺演説したのマジ黒歴史」


真田くんは当時を思い出したみたいで頭を抱えて唸った。その隣で皐月は優しく彼の背中を撫でている。



「剣、あんた頑張ったよほんと。あんな嘘よく言ったもんだ」

「おいアヤ嘘言うなし」


文香にチョップを食らわした都波がムッと顔をしかめる。


いや、ほとんどが嘘で塗り固められた演説だったと思うよ……と小さく息を零すと糸口くんと目が合って互いに苦笑いを浮かべた。


糸口くんは分かっている。私たちを誰よりも近くで見守ってきたから。

静かに本を読んでいる印象の強い彼だけど、しっかり話の内容も周りの状況も把握している。


だから私が傷ついている姿をいち早く見つけて私絡みで喧嘩した2人の代わりに謝ってきてくれたんだよね。


みんなと一緒に過ごすようになってから改めて「ありがとう」を伝えたけど、彼は「感謝されるようなこと俺はしてないよ」とだけ言って中断させてしまった読書に戻ったんだっけ。


それでもね、私にとっては “感謝するべきこと” だったんだ。


だから糸口くんは誰よりも心の優しい人なんだと思った。

未だにミステリアスな彼だけど、それは大きな声で言える素敵な人柄だ。



「アー!なんか今テレパシーみたいなの送ってた夏澄ちゃんと真守!」

「……そう? 園田と目が合っただけなんだけど」

「いーヤッ、絶対なんか送ってた!夏澄ちゃん笑ってたし!俺の夏澄ちゃんに近付くなしっ」


グイッと手を掴まれてあっという間に都波の傍に。

大きな手の中は熱くて、そして痛い。


………やっぱり変。なんか都波変。特に学校に来てから。


まるで大切なものを手放すまいと必死な子どもみたい。



「雅、園田が痛がってる」

「っ、ごめん夏澄ちゃん」

「うん……」


潰れちゃいそうだった自分の手を介抱しながら都波を見上げるとバツが悪そうに目を逸らされた。


ほら。変だ。


そんな彼に糸口くんが意味深なことを言い放った。



「雅は何しに俺らをここに連れてきたわけ? ……いや、俺らじゃなくて、 ‘園田’ を、か」