「あれ?夏澄ちゃん、なんか顔赤くない?」
「えっ……?」
ふと顔を上げると目の前には都波がいた。
しかもいつの間にか教室にいる。そして懐かしい席に座っていた。
窓側の1番前。
高3の時とは違う席に無意識に座っているのはきっとこの席が私にとって大切な思い出の始まりだから。
私のセカイに彩りを取り戻しはじめたキッカケ。
じゃなきゃ今の私はここにいるはずがない。
それもこれも全ての始まりに繋げてくれたのは目の前にいる都波だ。
「てかなんでそんなとこにいんの」
「なんでってここが俺の定位置じゃん? それよりも夏澄ちゃんの顔赤いのが気になるんだけど。ボーッとしてるかと思ったら急に赤くなるんだもん」
どうかしたの?と顔を覗き込もうとする都波を手で制し、後方へ視線を向けた。
みんなそれぞれ高2と同じ席に座っている。
文香と皐月は真ん中後ろの席。真田くんは廊下側の前から2番目の席に座っている。
糸口くんは私の隣の席だけれど真田くんの側にいる。椅子のない席を見るに、それを引っ張ってきたのだろう。
だけどあの頃と変わらない光景でもあってつい頬が緩んだ。
「夏澄ちゃん」
「こっちに来なー」
おいでおいでーと2人が手招きする。
向かおうと立ち上がるとグンと下に引っ張られた。
咄嗟に声が漏れる。
「っ……ちょっと都波、離してよ」
「なんで顔赤くなってたのか教えてくれるまで行かせない」
「赤くなんてしてないし、しつこい」
「…………」
掴まれた手首の力が抜けた瞬間を逃すまいと文香のもとへ向かうけれど、あの困ったような苦しそうな表情が気になってしまった。
さすがに言い過ぎてしまったかもしれない。でもしつこいものは執拗い。文香のことだって気になるし、都波にそんな顔向けられても私の想いはこれからも変わらない。
ただ……顔が赤くなったのはアンタのせいでもあるけれど。
都波に私のファーストキス奪われた事を思い出してたなんて言えない。
そんなこと言ったら都波が喜んでしまうだけだから。絶対に口が裂けても言わない。避けなくても言うつもりは微塵も無いけどね。
「夏澄大丈夫?」
「ううん全然っ。ほんと困っちゃうレベルで」
その応えに2人がギョッとするから思わず声に出して笑ってしまった。
こんな風に笑えるのも全てはみんなが私を変えてくれたから。
本当にこのクラスになれてよかった。出会えてよかった。みんなが大好きだ。



