「そういえばどのくらい行けてなかったんだっけ?」
そう聞いてきた皐月の声に我に返って「3ヶ月」と答えると彼女は悩ましく渋い顔をした。
そして「3ヶ月は長いね」とチラッと左隣を見て言った。
その様子にほっこりしてしまう。皐月が乙女すぎて。あまりにも可愛らしい彼女に微笑むと困ったように笑った。
最近は課題に追われているせいで会えずにいる。もう3ヶ月もだ。会いたくてたまらない。顔を見たくてたまらない。
この感じって遠距離恋愛に似てるのかな、なんて思ったりする私は相当想いが募っているんだと思う。
恋って凄い。未だに驚いてる。人をこんなにも一途に想っている自分がいることに。
早く目覚めて欲しくてウズウズしてしまう。
だからみんなと高校には……。
「────ちょっとくらい駄目?」
……うっ…そんな目を向けてこないでよ……。
おねだり上手な犬みたい……。
なんかダメなんだよね。私この表情に弱いみたい。
懐かしんでクスリと笑みをこぼすと都波はパァっと明るく目を見開く。
これまた期待と喜びに満ち溢れた犬みたいだ。シッポがみえる……。
とりあえず時間を確認してみるとスマホのロック画面には[16:42]と表示されていた。
面会時間は20時まで。それまでには十分すぎるくらい時間はある。
そうとなれば心は素直で。
「私も行こうかな」
そう告げるとみんなは笑った。つられて私も笑う。
なんだか躊躇ってたのがバカみたい。せっかくこうして集まれたのにこの提案に乗らないなんて絶対後悔するやつじゃん。
千木良くんへのお土産話になるよね、きっと。
そうと決まればあまり手付かずだった残りのフライドポテトプレートをいそいそと平らげ、お会計を済まし、母校へと足を運んだ。
道中懐かしみながら会話が弾んでいく様子に自然と笑みがこぼれる。
皐月と文香に挟まれながら歩くこの景色が私は好きだと改めて感じる。その後ろには男子たちが居る。
制服を着ていなくてもこの並び方や配置、景色、声の響きなんかでいとも簡単にあの頃に戻ってしまったようなそんな感覚に心底懐かしんだ。
平らな道から緩やかな傾斜を登り、足を進めると見えてくる母校。
正門を目の前にするとみんなで歓声をあげ、更に職員玄関から出てきた見覚えのある人物───担任の中嶋先生がこちらに手を振って歩いてきた姿に驚愕と歓喜に声を弾ませる。
そんな私たちに都波は得意げに笑いながら「俺が呼んだの」と言った。
「おーみんな元気そうだな」
「そーゆー先生はなんか疲れ気味?夏バテ?」
「まぁな。お前らも気を付けろよ。頑張りにも “ほどほど” ってもんを頭に入れとけよ。じゃないとこの社会についてけないからな」
大きなため息とともに大きな欠伸をひとつした先生は「中入って行くだろ?」と背を向けて校舎へ歩き出して行く。
「先生、相当疲れてるみたいだね」と皐月が遠のいていく背中にそう呟くと私と文香は大きく頷いた。



