「ま、いーや。何となく分かった気ぃするし」
納得したように小さく頷いた都波は「それよりもさ」と身を乗り出した。
その楽しそうな笑みにちょっと心拍数が上がる。
何を言うのだろうと期待と不安が入り交じって、けれど私的には文香のことが気になって……。
目が合うと少し寂しそうに笑みを浮かべる彼女。
その様子に気付いてそうな都波はある提案を持ちかけた。
「これから高校行こうと思うんだけど」と。
それに真っ先に応えたのは文香。続けてみんながいいねと賛同する。
だけど私は素直に頷くことができなかった。
頷きたい。素直に行きたいと言いたい。
けれど、この後久しぶりに訪ねる場所が脳裏にチラつく。
「───あ、もしかしてアイツんとこ行くの?」
やっぱり察しのいい彼はなんだかつまらなそうに、そして寂しそうに口を尖らせている。
心の臓が飛び跳ねた。
都波の口から “アイツ” と聞けば浮かんでくる好きな人の顔。
未だに眠り続ける彼が真っ先に浮かんでくる。
そう。まだ目覚めていない。
あの日──高2のクリスマスを過ぎても全く目を覚まさない日々が続いている。あと3ヶ月経ってしまえばもう3年も眠ったままだ。
あまりにも長すぎる眠りに不安を通り越して、怖さが増している。
何度会いに行っても微動だにしない千木良くん。
生きてる音を響かせる彼を見て何度胸が張り裂けそうになっただろうか。
そして、何度待ち焦がれている思いを伝えてるか。
不安で恐怖に駆られるけれど、彼の言葉を信じてる。
それでもこんなに待ち続けているのにちっとも訪れない目覚めはどうしても嫌な方へと変わらない悪い癖は健全だ。
そんな時は最後に囁かれた彼の声を思い出す。
『待ってて』
千木良くんの声を胸に待っていられるのはきっと────。



