叫べ、叫べ、大きく叫べ!


「? どしたの夏澄」

「え、いや、だって……」


不思議そうに見つめる彼女は私よりも重くは捉えていないみたい。

でもきっと心の奥底では辛い思いをしているんじゃないかって思考が巡ってしまう自分がいる。


だって逆の立場だったらつらい。好きな人が自分じゃない誰かに好意が向いている ってだけでも目を瞑りたくなる。耳だって塞ぎたくなる。


文香は苦しくないのだろうか。痛くないのだろうか。本当は私と顔を合わせたくないんじゃ……。



「ちょっとぉ、急に謝るから何かと思ったわ。夏澄そんな顔しなくてへーき。アレでしょ? 雅のこと」


まだドリンクバーに立っているであろう彼を指差しながら彼女は何一つ曇りのない優しい光のような顔持ちで私に笑いかけた。


文香の時折見せるその柔らかい笑顔が私は好きだ。普段のガッツのある笑い方ももちろん好きだけれど、これはまた別。



「アイツもさー 懲りないよねぇ。早く私のこと好きになれっつーの」

「文香……」

「だからそんな顔しないでって。言ったじゃん? 好きって気付いたのだってつい最近のことだ って」

「そうだけど」


でも「つい最近」って進学祝いで集まった時には確定済みだったわけじゃん。

てことは、高校の時にはもう───。



「西村って中学からじゃなかったっけ? 雅のこと」


そう言ったのはあまり口を開くことがなかった糸口くんだった。

続けて真田くんが頷く。


そういえば私以外みんな中学同じだったんだっけ。


ちなみに真田くんと都波は文香の小学校からの付き合いだとか。つまりは幼馴染。




「えっ 何その新情報……!わたし知らないんだけどっ」

「まあ皐月がアヤと仲良くなる前の話だし。知らないのは当然かも。てゆーか、俺はてっきりもう諦めたかと思った」


そう淡々と文香に告げた真田くんはアイスココアをひと口。

文香はそんな彼をひと睨みしていた。


きっと全て真実なのだろう。彼女は感情が顔に出やすい。


少しピリついた空間に間の抜けた明るい声が私たちに降り注ぐ。

当然この雰囲気を察した都波は席に着くなり、白い液体(きっとカルピス)をグラス半分まで飲み干すと「なんか暗くね?」と尋ねてきた。


そして真田くんと文香を交互に見る。


あまりにも察しが良すぎて私はゴクリと生唾を飲んでしまった。

さすが小学校からの幼馴染だけある。