叫べ、叫べ、大きく叫べ!


「香澄」

「うわっ」


帰ろうと身を翻すと俯いた彼がいた。

驚き、よろめいた体はそのまま後ろへ倒れる。私を受け止めてくれたのはフェンスだ。


び……っくりした……。やめてよほんと心臓に悪すぎる。
てかどこ行ってたの。




「千木良くんどこにもいないから勝手に帰っちゃったかと思ったじゃん。急に現れるのやめてよ心臓に悪い」

「香澄……おれ勘違いしてた」

「……?」

「もう嫌われたと思ったし、香澄はアイツの……」


言葉を詰まらせた彼に眉をひそめる。


『アイツ』って誰だ。それに『嫌われた』ってどういうこと。私が千木良くんを嫌うなんて────


ああ、一瞬だけあったね。沖縄のあの夜。まさか……。



「私があの時返信しなかったから、嫌われたと?」


そう聞くと黙る千木良くん。少しバツが悪そうに目をそらすから図星なんだと捉えることにした。



「さすがにアレは酷かったからね。凄くムカついたし。お預けにしちゃったけど……あの一瞬だけ嫌いだった。けどそれだけだよ」

「……いっしゅん……」

「そう、一瞬。……ふはっ」


あまりにも悲しげに肩を落とす彼に堪らず笑みがこぼれた。


こんな可愛い彼をはじめて見た気がするから、口が滑りそうになる。心の中にしまっとこう。



「笑うなし。てか聞こえてるし。 はあーっ俺まじ馬鹿」

「だって可愛かったから。てかやっぱ勝手に読むのズルいしやめてよ」

「ズルいって言われてもなぁ」

「はいはい。千木良くんのこと好きだから許してあげるよ」

「な……、それ……ほんと……はーっ」


しゃがみこんでしまった彼を上から見下ろす。


やっぱりさっきよりも薄さが増している気がする。
彼は気づいているのだろうか。

いや、気づいているみたいだ。


ゆっくり立ち上がった彼は「もうそろそろ行かなきゃな」と思い立ったように私を見下ろして言ったから。



「私ももう帰らなきゃ。冬休みも会いに行くよ」

「ん。ありがと。気ぃつけて帰れよ」

「うん。 ……ちゃんと戻ってきてよ。待ってるんだから」

「おお」