叫べ、叫べ、大きく叫べ!


はじめて屋上でみた千木良くんを私は失礼で不思議な男子だなと思ったよ。

それと同時に、かっこいい人だなと思った。

深く吸い込まれそうな黒い瞳が印象的でさ。眠そうだなって思ったり、突然変なこと言い出したり、影薄いなとか……。


だってずっと屋上の常連だったのに気付かれないってどんだけ影薄いの!?って思うじゃん。


だけど、あの夜、半透明の彼が現れてそれを悟った。


陰で探偵していた皐月も言っていた。


『あんなにイケメンなのに全く噂にならないのおかしいよね?』って。


クラス内では“眠りの王子様”なんて呼ばれているのに、学校中では誰も千木良くんを知らないのはおかしいんだ。寝てても起きてても少しは騒がれてもおかしくないというのに。


整った顔立ち。眠そうな目は切れ長で、瞳は深く吸い込まれそうな黒色。まつ毛も長いし。綺麗な二重まぶた。

誰がどう見てもかっこいい男子。


それなのに彼は自分を卑下する。体質がどうとかで『気持ち悪い』って。


事故によってもたされた体質なのはもう仕方ないことなのかもしれない。


けれど、治る見込みのある症状なのに、自ら逃げていたことは部外者の私からしても口を挟みたくなる事実だ。


気持ち悪くなんかないよ。周りがどう言おうと私は千木良くんをそんな風には思わない。

だってそれって凄い才能だもん。
本人は良くは思ってないみたいだけど。


でも人の心を読めたり、感じたりできるって本当に凄いことで、私からしてみたら羨ましい能力。


でも聞きたくない言葉もその中にはたくさんあるんだよね。


だからって逃げてばかりは勿体ないと思うんだ。みんながそんな千木良くんの敵だなんて思わないで。


もっと自分を大事にして。千木良くんはちゃんと愛されてるってことをたくさん知ってほしい。私もその1人ってことも────。



冷たい風が頬を撫で、肩にかかる毛先が後方へ揺らす。


隣には彼がいた。こちらを見ている瞳は私の“なにか”を読み取ったのか揺れていた。


柔らかく口を緩めるとなんだか泣きそうになった。


唇を噛み締めて、息を吸って、誤魔化すように彼に笑みを向ける。


半透明でも千木良くんは千木良くんだ。どんな姿であれ“千木良空牙”であることは変わらない。


そのままの彼が私は心から大好きなんだ。