叫べ、叫べ、大きく叫べ!


香澄がいなくなった方を空になった頭のまま見つめているとある人物がやってきた。


ヘアセットをしていないストレートな茶髪に一瞬『誰だ?』と思ったけど、雰囲気がいつも香澄の隣にいるやつだと分かってしまえば段々と頭はクリアになってきた。


確か名前は……と脳内を巡っていると“香澄の友人”は俺を一瞥してから自販機に向き合い、飲み物を選び、取り出す。


その動作が男の俺でも見惚れてしまうくらい滑らかで。


いつの間にか目の前にきていた香澄の友人は見下ろして言葉を放っていた。



「ねえ、香澄ちゃん泣いてたんだけどさ……お前が泣かしたの?」


その問いかけに黙っていると胸ぐらを掴まれた。


黙っているだけの俺とは全く違う目つきの色をした男は心底お怒りなようで、これから言われる内容も大体は想像つくものだった。


だけど……。



「香澄ちゃんは俺の“彼女”になるから。これ以上彼女に近付くなよ。……でもまぁ、香澄ちゃんを傷付けたからきっと嫌われちゃったんじゃない? 悪いって思ってんなら謝っといた方がベストだよね」


そう言い残して去っていった彼女の友人に半ばイラつきながらスマホを取り出し、3文字だけ送信した。


何時間経ってもそのメッセージに既読すらつかなかった。


香澄を見かけるたびに話しかけたくても向こうが俺を拒否してるみたいに隠れるし、逸らすし……これはもう完全に『嫌われた』と思った。


その瞬間、俺の中の何かが歪みだしたんだ。



修学旅行最終日。夢の中にいるようなあのフワフワとした感覚が抜けないまま搭乗し、東京に着くと気分がありえないくらい悪くなって……解散と同時に急いで便所へ駆け込んだ。


吐こうとしてもほとんど胃の中にはなにも入ってなく、ただ胃液のみが出てくるだけ。


苦しみから解放されたくてたまらなかった。


どうしたらラクになれるのか。そう巡っていると嫌な言葉がフラッシュバックした。それと同時に親や親戚、俺を拒否する人間の顔が次々と浮かんできて……香澄まで出てきた。


唯一の救いの存在が悲しそうに、苦しそうに、それから俺を嫌うような目を向けている。心中を抉った。


香澄だけには、そんな顔を向けて欲しくなかった。香澄だけには、俺を嫌って欲しくなかった。何がなんでも。


自業自得。


もう誰も俺を見てくれない。笑いかけてもくれない。愛してもらうことさえも。





――俺って生きてる意味あんのかな?



なんて思いながら気を持ち直そうと便所から出た時、香澄とアイツが手を繋いでるとこを見てしまったんだ。