叫べ、叫べ、大きく叫べ!


香澄は俺にとってキーパーソンなんだと思う。それは運命ともいうのかもしれない。


俺たちの関係がより濃くなったのは夏休み中だと思っている。
バイト上がりの俺に香澄が突然抱きついて、かと思えば泣いてて……。
所持品はゼロだし、髪はボサボサ、そして酷く疲れきった様子と纏うオーラ。


香澄が初めて抱えていた問題を俺に打ち明けて、羞恥心を忘れて泣きじゃくる彼女は初めて泣き方を覚えた子どものようだった。そんな彼女に可愛さを感じた俺の心は馬鹿正直に高鳴っていて、困っていたことを香澄はきっと知らないだろう。


手を掴んだのだって、繋いだのだって、花火を見上げる横顔も、その歓声も、ブレた写真を記念だと言ったのだって……香澄を“好き”だと意識してしまったせいだ。


その時はまだ“友人”としてだった。“恋”として自覚したのは後夜祭のとき。打ち上がる花火を見上げるその横顔に見惚れながら。無意識にカメラをきっていた。


誘ったのは俺だけど、香澄と一緒にいる男が気に食わなかった。手なんか繋いでさ。それを振り払わない香澄にもイラついて。そう思った瞬間、心に宿っていた謎の花の正体が分かったんだ。


そこからだ。焦燥感を抱き出したのは。このままじゃ屋上どころか俺のことすら忘れられてしまうんじゃないかって。相変わらず独りな俺と違って香澄は以前より逞しく煌びやかで……とても楽しそう。そんな彼女を見てたらものすごく遠くて、寂しくなった。


どうすれば香澄は俺の傍にいてくれるだろう。
どうすれば俺の気持ちを分かってくれるだろう。
どうすれば、どうすれば……!


そんな自己中心的なことばっか思い馳せていたからあの日――潮と仄かな柑橘系の香りの中で彼女を傷付けた。


なにが『受け取って』だ。
なにが『友達以上恋人未満』だ。もっと他に言い方があっただろ。
彼女は困ってた。悲しそうだった。誰のものにでもなって欲しくなくて、ただ俺を見て欲しいがために、あんな無責任な、最低な告白で……香澄を失望させてしまった。