幽体離脱なんてしたくてするもんじゃない。戻れなくなる可能性が高いからだ。だから安易にするもんじゃない。
そうはわかってはいるものの気持ちが勝った俺はまだ名前も知らない彼女の元へ。
それは毎日のようにはいかなかった。不定期に呼び寄せられる感じに俺は彼女の元へ向かっていることを知ったのは初めて彼女と話した夜だった。
気づくと驚いた顔の彼女。半袖短パン。暗く、物が少ない室内。ザックリした情報を頭で理解していく俺に“普通”に話しかけてくる彼女を不思議に思った。
屋上で喋った時と変わらない声音と振る舞い。
不思議すぎて彼女が怖かった。
なぜこの姿の俺を怖がらない? なぜ普通に話す? 逆になんで興味津々なわけ? パーカーのくだりとかよくない?
ンなことを思いつつ話していくと、ついポロッと口から本音が飛び出してしまった。
久しぶりに発したその言葉は勝手に自分を傷付けた。冷や汗をかいた。顔が引きつっていくのもわかった。なのに――。
『すごいね』
『なに驚いてるの。全然気持ち悪くないよ。逆に凄い才能って感じ? ……なんて言えばいいか分からないけど』
と笑っていた。
こんな風に言われたのは初めてで、どう反応したらいいのかも忘れるほど俺自身の時間が止まった。
俺のこの能力を『才能』と呼ぶ彼女を前にして泣きそうになった。
嬉しかった。初めて俺を受け入れてくれる人が現れてくれたと思ったら、もっと彼女を知りたくなった。
その途端再び気が緩んだ心体は全てを解放して『寂しい』と思う彼女の心を読み続けていくと、腑に落ちた。
この日も彼女は心底気が滅入っていたらしい。『寂しい』『悲しい』『苦しい』そんな感情が頭を撫でた時に伝わった。
そんな小さな心の叫びに導かれるように俺は――香澄の元へやってきたんだ。



