叫べ、叫べ、大きく叫べ!





―空牙side―





母さんが香澄を送り出し、父さんと姉さんは静かに眠る俺を眺めている。


誰も気付かない。肩に触れても、声をかけても見向きもしない。


これが現実だ。



しばらくするとドアが開いて母さんが姿を現す。


目が合ったかと思い反射的に逸らすけれど、母さんは平然と父さんたちに語りかけていた。


胸の奥が痛くなった。



帰宅準備をした3人は次々と眠る俺の頬に手を添えて言葉を残す。


ピシャリと閉まったドアをぼんやり眺め壁に身を預けると脱力感を覚えたのかゆっくりしゃがみ込んだ。


深い深いため息をこぼし、鼻で笑う。



やられた。


何かしら仕掛けてくるとわかってた割には、なにまんまと引っかかってんだよ、俺は。まさかこんな事になるなんて思わなかったし。香澄には完全にやられた。


香澄があんなこと言うから……。



『千木良くんは勘違いしてるよ』

『――なにより千木良くんのこととても大事に思ってる』



そんな言葉に迷わず疑った。だけど、思いに反して体は直ぐに――。


入れないと言ったのは単純に怖かったから。音が聞こえないと言ったのも。本当は聞こえてたし、入れた。弾き飛ばされたりしない。


だけど……。



立ち上がり眠る自分に近付く。心電図の音も胸が静かに上下する動作にも生きている証拠なのだと知るけれど、いざ自分に触れようとすると――



バチッ



やっぱり弾き返されてしまうんだ。こればかりは何度やっても変わらない。


なあ、散々聞いてただろ?母さんたちの言葉をさ。俺だけ?聞いてたの。おい、聞いてんの?


何度触れようとしても見えない壁1枚があるみたいで、それは電流がながれているような感覚が刺激として返されていく。



「おい、いい加減にしろよ。なんでそんなに頑固なんだよ……俺を戻らせろよ!」


どうしてこんなに肉体が拒絶しているのか――……そのきっかけを作ったのは7歳くらいだった気がする。