「治療法は緩和目的として薬を導入する他、家族らのサポートが重要とされているんだ。空牙のことしっかりサポートしてきたんだけど……“つもり”だったんだな僕たちは」
情けないと悲しく笑みを作ったお父さんは一つ息を吐き出すと千木良くんがこうなってしまった原因だと思われる事を発した。
「きっとあの子は色々“見え過ぎて”しまったんだと思うんだ。その症状が和らいできたと思った僕達もいけなかった。……空牙が僕達と目を合わさなくなったのも、話す機会が無くなってしまったのも、全て、」
「違いますよ。みなさんしっかりサポートしてきたから空牙くんはこうして生きているんです。だから責めないでください。……悪いのは、空牙くんの方ですよ」
そう。悪いのは千木良くん、あなた自身だよ。
なんでちゃんと向き合って来なかったの。逃げてたのは千木良くんだよ。こんなに愛されてるじゃん。なんで分からなかったの?なんで気づかなかったの。
呆気に取られたお父さんの顔はやっぱり彼に似ていた。
「みなさんは悪くないです。向き合ってこなかった空牙くんが悪いんです!」
ふつふつと込み上げる感情を押し殺しながら歩んだ先はドアだ。開けると先程と変わりなく壁に佇んでいる彼と目があった。
「千木良くん、話聞いてた?」と聞くと静かに首を振った。でもその表情は苦しそうで。
「本当に?」
「……ああ」
「そ。わかった。でも中は“見える”よね」
彼の反応を見ずに再び中へ戻れば彼らにあることを伝えた。
もうこれしか方法はない。あの表情を見れば分かる。この病室に入ることが出来ない理由も、『戻れない』と言う理由も、この病室から聞こえる音だって、本当は――。
「空牙っ!もっと信じて。私達みんな空牙のこと大好きなんだよ!」
「空牙ごめんねっちゃんと向き合ってられなくてっ、寂しい思いさせてしまってっ、辛かったよね、私達がもっと傍に……っ、独りじゃないよ私達家族はずっとあなたの味方だよ……っ」
「空牙。みんなお前のこと大好きなんだぞ。お父さんだって負けないくらい愛してる。ダイチだっていつも心配してばかりだ。戻って来い。いつだって僕達家族は空牙の味方だよ」
お父さんだけは眠る彼から視線を外して、ドアの向こうを微笑んだ。そこには見開く千木良くんがいる。
まさか見えている?と思ったのは一瞬で、すぐに視線を戻したお父さんは悔しそうに「見えないな」と呟いていた。



