叫べ、叫べ、大きく叫べ!


「空牙っあなたのこと何一つそんなこと思ってないよっ、ごめんねっごめんなさい空牙っ」

「空牙、あんたそんな事気にする前に私達と話しなさいよっ、なんで、……っ、一歩引いた目って何? いつどこで私たちがそんな目をした!? ……してないって。あんたのことずっと心配してたんだよ……ずっとさぁ……っ」


彼に覆い被さるように寄り添って泣いてる2人を和らげるように擦りながらお父さんが私に困った顔を向けた。



「僕はあまり泣く姿は見たくないタチなんだ。特に家族のはね。……15年前を思い出すよ」


遠くに目を向けた彼はその日のことを思い出しているのだろう。懐かしみながらもその表情は苦しそうだ。



「空牙はね15年前大きな事故に巻き込まれてしまってね。本当に危ない状態で。ちゃんと頑張ってくれたお陰で生き延びてくれたんだ」


だけどね……と言葉を詰まらせた彼に私はすぐに察した。きっとこの日を境に千木良くんの身体に変化が起こったんだ。



「幼いながらに在りもしない事を言い出したり、指をさしたりする事がよくあってね。けどそれは幼い子どもにはごく稀に“見えたり”するってことを知っていたから問題なく過ごしていたんだ。『後遺症は問題無い』と言ってくれた当時の先生方の言葉を信じてね」


はは、とから笑いをしたお父さんはだいぶ落ち着いた2人の背中をそっと撫でてから少し離れた椅子へ座った。それから私を隣へと手招く。

一瞬躊躇ったけれど話を聞く方が最優先なことは分かりきっているから隣に腰を下ろした。


前を見ると眠る千木良くんがいて、柔らかな眼差しをしたお母さんとお姉さんが彼の頬をそっと撫でていた。


手を組んだお父さんが再び口を開く。



「空牙が成長してもその言動は終わらなかった。小1の時だったかな。朝になると居ないはずのリビングの床に寝ていたり、気を失ったかのように突然倒れることも増えていってね。慌てて病院へ駆けつけると『解離性障害』と診断されたんだ」


何度も目にしたワードを改めて耳にするとより現実味があって息を飲む。


それにしても千木良くんのこと無知すぎてかなり出しゃばった真似をしてしまったと反省する。


15年前に事故に遭ったとか聞いてないし、何かしら原因はある気がしてたけど家族の問題以前の問題でもあったわけで……内心驚きを隠せないでいる。


私のことはたくさん聞いてくれたくせに(思い返せば自分から泣きながら話していたんだけれど)自分のことちっとも話してくれないんだもん。そりゃこうなりますよ……。