叫べ、叫べ、大きく叫べ!


帰る時間なんか関係ない。今は私がしたいことをする時間だ。なにより千木良くんの誤解を解かなければならない。


こんな時間に押しかけてしまって申し訳ないと思い頭を下げた私を彼らは優しく椅子へ座るよう促してくれた。


だけどそこまで長居するつもりのない私は首を振って眠る彼から3人へ視線を移した。



「あの、空牙くんの体質についてご存知かと思いますが、彼が今でも眠り続けているのは幽体した彼が本体によって拒絶されているからなんです。幽体した彼は戻りたいと言っているんですけど、本体()がどうして拒んでいるのか心当たりありますか?」


ちょっと自分で言っていてよく分からないこの言い分に彼らは私を真っ直ぐ見つめて、そしてお母さんとお姉さんが小さく頷いた。


お母さんは泣きそうな顔でいて、お姉さんは参ったように笑ってみえる。


対して、お父さんは眉間に皺を寄せていた。多分私の語彙力が足りないせいかもしれない。



「すみませんっ、変に探るような言い方してしまって……」

「ううん、いいの。空牙がこうなってしまったのはやっぱり私たちのせいなの。ごめんね空牙……っ」


膝から崩れるように眠る彼に駆け寄ったお母さんは嗚咽をこぼしていた。その背中を撫でているお姉さんは涙は無いけれど唇を噛み締めている。


その様子に俯きかけた私に声をかけたのは千木良くんのお父さんだった。お父さんの声はどことなく彼に似ている。そしてちょっと雰囲気も。



「君には……“見える”のか?」

「はい。さっきまで一緒にいました」


そう言うとお父さんは目を見開き、お母さんとお姉さんは俯いてた顔を上げて穴が空いてしまいそうなくらい見つめられた。


やっぱり変なことを言ってしまったんじゃないかと気まずくなって思わずから笑いを浮かべる。



「彼はよく自分を『気持ち悪い』と言っていました。それは今でもです。成りたくてなったわけじゃない体質に周りは彼を一歩引いた目を向けるとも言っていました。……でも皆さんはそうじゃないですよね?」


私は確かめるようにそれぞれ3人の顔を柔らかく見つめた。


私は彼の全てを知っているわけではないけれど、この家族にはちゃんと愛があると思っている。だってこんなにも心配して、彼を思って泣いてるのだから。



――千木良くん、あなたはちゃんと愛されているんだよ。