叫べ、叫べ、大きく叫べ!


ふと廊下にオレンジ色が差し掛かって右を見ると眩しい夕陽が見えた。ポケットからスマホを取り出して時間を確認すると16時36分。


もうそろそろ帰らないといけないのかとこのもどかしさに顔を顰めた。


出来れば今すぐにでも彼のお母さんと話がしたい。そして眠る彼にも聞かせたい。それぞれの思いを。


家族なんだ。きっと分かり合えるはず。私の家族のように。逃げてばかりじゃ何一つ伝わらないことを知った今だから言えるんだ。


私も本音を言うのは正直怖かった。今まで母の顔を伺ってばかりで心の中にずっとしまい込んでいたから。


でもそんなんじゃいつまで経っても変わらない。変化を求め続けたところで何かしらアクションをしないと前にすら進むことが出来ない。


そうきっかけを与えてくれたのは母が倒れた日。これはある意味チャンスなんだと思った。変わるチャンス。自分自身はもちろん、そして家族にも。


……だから、千木良くんにも変われるチャンスが来たってことなんだと思うんだ。



「千木良くんが思っているほどこの世界は冷たくなんかないよ」

「かすみ?」

「千木良くん変わろう。もっと自分らしくいていいんだよ。誰も千木良くんを嫌ったりも変に思ったりしてない。まずはさ――」



キョトン顔の彼から目の前のドアへ視線を移した。近寄りドアをノックする。中から返事が聞こえゆっくり開かれると彼のお母さんが現れた。


後ろの方で息を飲む微かな声がした。


彼女は私の後ろにいる彼に気づくことも無く、私に笑顔を見せる。胸がチクリと疼いた。


中へ入る瞬間に振り向くと切なく優しく笑った千木良くんが見送っていた。



『大丈夫』と頷き中へ。そこにはお母さんだけじゃなく、スーツ姿の長身の男性とスタイル抜群な黒髪をてっぺんで結った女性がいた。


絶対、お父さんとお姉さんだ。と確信を持てたのは以前彼から家族構成を聞いていたからだ。


……もしかしてさっき千木良くんが息を飲んだのって2人の姿も見えたから?



「香澄ちゃんどうしたの?」

「すみません、急に。あっ初めまして。私、ちぎ……空牙くんの友達の園田香澄です。少しお時間いいですか?」