「凄い声だったな。俺も初めて聞いた。出るじゃん声」
「声飛ぶかと思った。自分でもびっくりした」
「ハハッだろーな。てかよく虫だけで済んだよな」
「あーゆー時に虫って便利な言葉だよね。いたら嫌だけど。……でもよかった千木良くんのこと3人には見えてなくて」
あの中で父がもし見えてたらどうなってたんだろう。栞那に彼氏がいるって知った時の父の反応を知っているからこそ不安に思ってしまう。
父の傷心顔は結構おもしろい。
「そうだ千木良くん。もう察しているかもだけど報告するね。一応家族仲は良い方向へ進んでいってるみたいです。色々迷惑かけちゃってごめんね。そしてありがとう」
肩から離れた彼は私と目を合わすなり「よかったね」と笑ってくれた。それに私も返す。そして今度こそと口を開いた。
「千木良くん。単刀直入に聞きます。千木良くんは何に苦しめられているの? 病室にいる千木良くんがこの姿を拒否する理由ってなに?」
教えてと見つめると固く口を閉ざす彼にさらに言葉を重ねる。
「私、千木良くんが倒れたあの日に色々聞こうと思って空港で解散した瞬間に探してたんだよ。そしたらお手洗いから出てきた千木良くんを見つけて、そしたら倒れて……」
思い出しただけで身が震えてしまいそうになった。とても怖かった。大切な人が今にも消えてしまうんじゃないかって。酷く絶望していた。
「倒れる前、千木良くん私の方見てたよね。笑ってた。そして悲しそうだった。倒れたのは私が原因? 私があの時逃げたから? こうなってしまったのは何か理由があるからなんでしょ? 教えて。私が千木良くんに助けてもらったように、今度は私が千木良くんを助けたい。だから、」
「ありがとう香澄。その気持ちだけで充分だから香澄は何もしなくていいよ。それに原因とか理由ってのは何もないから。安心しなよ」
軽く笑う彼はあまりにも何かを隠そうと必死に見えた。何をそこまでして隠したがるのか。苦しいなら苦しいって、助けて欲しいって、言って欲しいだけなのに。
それとも弱音を吐いたら負けとでも思っているのだろうか。強がりもいいとこだ。私には『叫べ』って言ったくせに。
こうなったら何がなんでも吐かせてやる。



