「ただいまー」
少し声を明るくして家の中へ入った。
そこは暗い世界だった。
でも、リビングからはニュースを読み上げる男性の声がする。
顔をのぞかせるとソファに座った母がいた。
その背中に声をかける。
反応がないから、さらに近付いて声をかけた。
「お母さん、ただいま」
「……テーブルに置いてあるからさっさと食べて片付けといて」
「……はい分かりました」
今まで母の機嫌を伺ってきた私はその様子をみて敬語になる。
おかしな親子の会話だ、と思いながらテーブルに視線を向けた。
ポツンと中央にステンレス製の鍋が置いてある。
今になって鼻が利いてきたのかカレーの匂いが鼻についた。
ここ最近カレーしか食べていない気がする。
これじゃ、カレーになってもおかしくないんじゃないかってくらい、毎日のように食べている。
ひどい時は朝からカレーで夜もカレーな生活だ。
それでも飽きないのは多分舌も体も馬鹿になってしまったからだと思う。
いわゆる“慣れ”だ。
このカレーも当たり前のように調理されるのを待っているのだろうか。
みんな母の気分で調理されるのをどう思ってるのだろう。
オタマにカレーを大きくすくいながらゴロゴロ入った具をみて思った。



