「はぁぁぁぁさっぶぃまじ無理ぃ」
「あははっ、マフラー忘れちゃったから仕方ないよねー」
「く〜、笑ってないで温めるかマフラー貸すかしてくれてもよくない?!」
「やだよ。私たちアヤになんか甘くないもん。ネー?」
イタズラに笑う皐月に釣られて私も首肯すると「香澄までひどいっ」とべそをかかれた。
12月中旬。あと少しでクリスマス。そして今年が終わりに近付いてきている今日この頃。もう椅子に座ることさえ躊躇い嫌ってしまう季節だ。
下にタイツや体操着を履けばなんとかこの冬もやっていけそうな気がするけど……校則上それらは禁止されている。なぜ禁止対象なのかさっぱりだ。その割には破っている人もよく見かけるわけだけど……あまり注意されている所を見かけないのもさっぱり分からない。
そろそろ見直してみてはどうでしょう、先生方……。
「あ、ねえねえ。24日さ午前のみじゃん? どっか遊びに行かない?」
カイロをあちこちに当てながらそう聞いてきたのは文香だ。私たちは即答で頷いた。早速どこ行くかの話に弾んでいると後ろから「はよー」と声が掛けられた。
振り向けば眠そうな都波がドカッと座ってバタリと机に伏せた。彼にしては珍しい動きで、思わず声を掛けてしまった。
「眠いの?」
「んーちょっとねぇ……チャイム鳴ったら起こして、おやすみ」
そう言い終えると寝息をたて始めた。あまりにも早い寝姿にギョッとする。すると後ろで文香が「珍しいねこんな雅」と言ったのを聞いて彼女たちも初めて目にする姿なのだと『そうなんだ』と胸の内で頷いた。
人の寝顔ってやっぱ無防備なんだな。千木良くんもそうだったけれど、都波も普段の顔つきよりほんの少し幼く見える。
綺麗な鼻筋に長いまつげ。ここから見える情報はそれぐらいだ。
そっと笑んだ私は再び会話に混ざりこむ。
そういえば即答しちゃったけど24日は家で何かするのかな。
あれから園田家はよく話し、よく笑う事が増えた。それも父と母の離婚が免れた事が大きい。ちゃんと報告を受けたのは母の退院祝いから1週間明けた日だった。
2人揃ってダイニングテーブルに身を寄せて座って、就寝前の私たちを集め聞かされたのは――
『“まだ”離婚はしない方向になったから。別居は終わりにして、まず1年間母さんとの関係を見直す期間にしてから、それから母さんが今後どうしていくか判断することになりました』と。



