東京は寒かった。半袖にパーカーはさすがに寒すぎてもう1枚着込めばよかったと後悔。文香たちも寒そうに身を縮めて身体を摩っている。


先生らは口を揃えて「家までが修学旅行」と念に念を押して私たちを見送った。


ぞろぞろと足並みを揃えて乗り継ぎの駅へと足を進める中、私はキョロキョロと辺りを見渡す。


そんな私に声をかけたのは。



「香澄ちゃんなんか探してるの? 一緒に探そっか?」


顔を覗き込む都波に一瞬ドキリと胸が弾むけれど今は一刻も早く会わなきゃいけない人を探しているため言葉もなく頷いて、横に振った。


そっかと低めの声が耳元で言い放たれ顔が離れていった。それでも私の隣から離れない彼。糸口くんと真田くんは少し前にいるのにと目配せすると悲しげに眉毛を下げた。



「香澄ちゃん、」

「あっ」


目線の先に見つけた千木良くんの姿。どくんと心が飛び跳ねた。


今出てきた場所はお手洗いだろうか。
大丈夫かな、と心配してしまったのは遠くから見ていても分かるくらいにふらついて見えたから。


急いで向かう私を止めた都波にごめんと掴まれた手を振り払らおうとするけれど男子の力には及ぶはずもなく、離してと目で訴える。


首を振られた。正直こうしている今でも千木良くんが気になってしょうがない。視線だけを千木良くんに向ける。黒いパーカーはすぐに見つかった。


やっぱりなんか辛そうだ。壁に寄りかかってるけれど身体は傾いてる。早く彼の元へ行かなきゃ。
この手を離してくれたら真っ先に駆けつけて行けるのに。



「“誰”を探してんの」

「千木良くん」

「千木良? あー……ファミレスの?」

「そう。分かったなら離して。私言わなきゃいけないことがあるの」

「好きなの?そいつのこと」

「っ、そんな事あんたに関係な――えっ」