叫べ、叫べ、大きく叫べ!


朝を迎え、朝食を取り、旅館を出ると2日間の民泊生活が始まる。
男子とは最終日までお別れなので、私たち3人の機嫌はとても良好だった。


とはいえ皐月は朝から私に何か言いたそうな目を向けてきた。おそらく私の目が腫れていることを確認したからだと思う。

どうしたのと首を傾げると一瞬驚いたように見開いてからニコッと微笑みを交わすだけでそのまま食堂へ向かったのは今から5時間前のことだ。



「立石、西村、園田!」


中嶋先生の呼び掛けを合図に穏やかな笑みとともにこちらに手を振る人に近付いた。


緊張気味に挨拶を交わしたのは2日間お邪魔させていただく金城照幸(きんじょうてるゆき)さん。60代だろうか。温厚そうな雰囲気を纏う彼に糸が解れ和みだす。


金城さんについて行く最中に横目で捉えた人物に気まづさを感じ、更にもう一人とも目が合った気がして心臓が嫌なくらい速くなった。


それを掻き消すかのように金城さんと楽しそうに話している文香の会話に集中させた。


さすが文香だと皐月と目配せして笑う。コミュニケーション能力高すぎてもはやついていけないレベルだ。もう名前まで覚えられてるし。すごいな。


ワインレッドのワゴン車の運転席には息子さんがいて、挨拶を交わすと気さくな返事が返ってきた。ほっと胸を撫で下ろしたのは見た目と違って優しい声とサングラスを外した目がくるりんとしていたから。


意外と色黒でサングラスかけてる男の人って優しかったり、かわいい目をしていたりすることが多い気がする、と改めて実感した瞬間だった。