本当に吸い込まれているみたいに感じるのは千木良くんの顔が近くにあるからだろうか。
彼の瞳に私が映っている。泣きそうな顔してる。それとも眠いのかな。そんなことない。ものすごく苦しい。
本当に“好き”なの? ちゃんと恋愛感情の“好き”なの? 友達以上恋人未満ってことは私とは恋に発展することはないって意味?
千木良くん、私たちは今からナニをしようとしているの……?
「俺のことイヤ?」
「イヤじゃない、よ……?」
「じゃあ逃げないで受け取って」
仰け反る私を引き寄せると一気に距離が縮まった。熱っぽい瞳に見つめられて目の行き場を失う。千木良くんおかしいよ。何考えてるの? この状況で何されるか分かってしまう程私鈍感じゃないよ。
彼の息が唇にかかった。彼を制止するすべはない。目は逸らせられないし、しっかり手はホールドされてしまっている。
ぎゅぅと目をつぶった。このまま受け取ってもいいと思ってしまった。もうどうとでもなってしまえ。好きな人からの口付けだ。嬉しくないはずがない。
私たちは友達以上恋人未満だから、キスだってできるって意味なんでしょう。
逃げないから、受け取ってあげる……――。
「ふはっ」
「……?」
「香澄、そこはちゃんと『嫌だ』って主張するとこだよ。俺たち付き合ってないんだから。安心しなよしないから」
正直、こんなことされて平然といられる自分に驚いている。そこで可笑しそうに笑っている彼を見る目は色もなく冷たいだろう。嵐の前の静けさなのだろうか。
視線を落とすと沸々と込み上げてくる煮えたぎる思いに歯を食いしばった。目の前にいる千木良くんは私の知っている人じゃない。私のチャラいの基準は都波雅だけど、これはまた新種だ。チャラいのは好きじゃない。苦手以上だ。
キスをせがんでおいて止めるなんてタチの悪いチャラ男がやることでは? それを真に受けた私を嘲笑うのもムカつく。
私がどんな思いで、受け入れようとしたのか分かってない……!
なんで、こういう時に人の心を見透かさないの。読んでよ。確かめたいなら勝手に読んでよ。
「……ねえ、私を好きって言ったけどそれは何の好きなの?」
「…………。 そんなの友達としてだよ」
「そっか、わかった。 ……じゃあね」



