叫べ、叫べ、大きく叫べ!


へ? まさか。え、そんなことあるわけ……。



「どうした?胸なんか押さえて……痛いの?」

「…………ッムネ!? 痛くないしっ全然っそれっぽっちも、! てかどこ見てんのよ変態」

「は。何言ってんの。そういう香澄の方が変態なんじゃないの。そういう意味で言ってないし……それとも、」

「違う違くてっ、も〜〜ッ」


そんなわけないと思いたい。こんな気持ち全然分からないし。3人の惚気け聞いてたって『私には関係のないことだ』と思いながら聞いてた程だったし、なのに何このどうしようもない蒸発してしまいそうなくらいの熱さは。


手の中にある冷えたシークワーサーを頬に当てたのは無意識で、“気付いたら”冷たいと感じて、“気付いたら”千木良くんが私の顔を覗いていて……。


脳内は“気付いたら”がいっぱいだ。私がぼーっとしているから“気付いたら”という状況が起こっているだけなのだと思うけれど。なんか違う。


胸が痛い。彼を普通に見れない。



「まじで大丈夫?」

「……なにが」

「だからどっか痛くないのって話」

「どこも痛くない。大丈夫、ありがとう」

「そ」


どこか安心したように息をつく彼に私も小さく吐いた。


パキッとキャップを開けた音に反応して、彼の手に視線が行く。口元へ運ばれる飲み口。喉を鳴らして飲む横顔と動く喉仏から目を外せなくいると、気まずそうに隙をついて放たれたセリフに思わず顔を覆った。


……もうやだ。今すぐ消えてしまいたい。なんで飲んでる姿を見入っちゃったんだろう。無意識にも程があるよ。



『そんな見られると飲みにくいんだけど』


その声は笑っていたけど呆れているようにも聞こえた。わかるよ。人の飲んでる姿まじまじと見る人なんて中々いないと思うし。飲みにくいはずだよ。私でもそんなことされたらそう言うよ。


はあ、なんかもっと寝れなくなってきた。このまま朝になったらどうしよう。起きたらすぐ民泊へ出発だというのに。


ふと肩に重みがかかった。

再び激しくなる鼓動に目が泳ぐ。何してるのと彼を見るけれどサラリとした黒髪しか見えない。