叫べ、叫べ、大きく叫べ!


みんなが寝静まる中、私だけ覚醒状態でなかなか寝つけずにいた。起こさないようにそろりと部屋を抜け出すと雰囲気が違くてドキドキした。


先生たちももう寝ているだろう。
見つかったら飲み物買いに来ましたとでも言ってしまえば大丈夫だと、お財布とスマホを常備した私はぷらぷらと館内を散歩する。


日中と温度差はほとんど変わらなくて過ごしやすい。時折吹き抜ける風が気持ちいい。仄かに潮の香りがする。あと柑橘系の香り。

階段を下りるとさっきまで楽しく遊んでいた卓球台が見えた。


20時台にフリータイムを迎えた私たちは《すまいる》からの着信を合図に集まってたくさん遊んで腹筋が崩壊してしまうんじゃないかってくらい笑っていた。


途中、中嶋先生も交えて遊んだのはきっと幾つになっても忘れることのない思い出だ。それくらい楽しすぎる時間だった。


いつの間にかロビーに辿り着いてしまったらしく一通り周りを見渡す。


辺りは薄暗く、唯一の頼りは自販機の明かりだけ。その近くに2つの長椅子が見えた。


進んでいく足を止めたのは自販機に近い長椅子に誰かが座っていたからだ。


後ろ姿には見覚えがあった。
絶対“彼”だと確信を持って止めた足を運んでいく。


面白いことに近づいていくにつれて鼓動が高まっていて、衝動的に笑いだしそうになるのを呼吸を忘れるくらいに止めた。足音も慎重に消しながら近づく。


千木良くんは寝ていた。


本当は驚かすつもりで近づいたはずなんだけどな。残念。
……首、痛くないのかな。


背もたれがない椅子なため俯いている状態でいるのだけど、あまりの垂れ下がりようにそう思ってしまった。


小さく声をかけても目を覚ますことはなくて、だからって無理やり起こすのもなんだから私はそっと彼の隣に腰を下ろした。


寝顔なんて見たくて見るものじゃないとは思う。誰だってそう。私だって見て欲しくない。寝ている時ってどんな顔をしているのか分からないし。凄い顔してたらもっと嫌だし。見せられる範囲は家族だけ、だと私は思っている。


……だけど、千木良くんの寝顔は見たことがあるから。また見たいなと思っている感情が溢れて、勝って、下から覗き込んでみた。


きっとあの日の夜のような寝顔……。