叫べ、叫べ、大きく叫べ!


心配と焦りを含んだ瞳に覗かれて私は目元を拭って背ける。


その先には文香と皐月がいて、意味もわからず再び溢れた。


なんで泣いているんだろう。みんなが心配そうに私を見てくるし、頭を撫でてくれるから止めようにも歯止めが効いてくれなくて困る。


初めてなんだ。こんなに楽しんでいる文化祭は。こんなに楽しいと思ったのも。学校が、クラスが、友達が、いまこの瞬間が愛おしいだなんて。



「香澄……」

「ご、ごめん……っ、なんか凄く幸せで……、止まらなくて、ははっ、うん。みんなありがとう……っ」


私なんかと友達になってくれて。親切にしてくれて。手を繋いでくれて。寄り添ってくれて。背中撫でてくれて。頭撫でてくれて。


――‘’ありがとう”


潤んだままいつまでも打ち上がる花火を見ていると左手が何かに包まれた。


とくんと胸の奥が飛び跳ねるけれど意外と落ち着いている私はそれと彼の顔を交互に見た。
都波の手は大きくて温かい。


彼はひと目私を見てから花火に移した。その横顔をみて私はぷふと笑みが溢れる。なんか緊張している面持ちの様子に彼らしくないと思ったから。



「都波ってさ、面白いよね」

「えー心外だな。面白いことなんてしてないのに。……俺に手握られて嫌じゃないの」

「んーわからない。けど……」


噤んだ。

都波にこんなこと言うと調子乗りそうだ。だからあまり言いたくない。だけどたくさん助けてくれて、優しくしてくれて、お節介までしてくれちゃって……私に光を与えてくれたのは紛れもなく彼だということを私は心から感謝しているから。


いつまでも発さない私に都波は「けど?」と聞き直している。ちらりと見上げるとキュッと口を結んでん?と笑って首を傾げた。
意をけして声に出す。視線は逸らさずに。



「ありがとう。都波が掃除手伝ってくれてなかったらこんな風に花火なんて見てなかったと思う。私今とても幸せ。ありがとう。……あとこの手は嫌いじゃないかな」


キュッと握る力が強くなった。
都波は空いてる手で口を覆っていた。なにやらブツブツと言っている。そんな彼に笑って視線を花火へと移すと最後とみられる大きな大輪が夜空に煌めいた。