無事生還した私たちは休憩ブースへ来た。
私たちは放心状態に陥っている。その内2人――都波と糸口くんは興味深そうに楽しく話している。
いやなんであなた達はそんなに楽しそうなんだ。なんで笑ってられるの。元気かよ。
見てご覧よ。みんな正気が失われちゃってるんだよ。
みんなは一体どこへ意識が向いているのだろうか。
私はなんとか頭は働いているからそこまでダメージは受けていないみたいだ。
それにしても、あっという間過ぎて感情が追いつかない。やっと“過去一怖い”お化け屋敷を味わった人たちの気持ちが解った。たしかに放心状態にもなるはずだ。
驚いたのは中は何にも装飾すら施されていなかったことだ。薄暗い室内には誰も居なかったのが印象的。BGMも雰囲気が出ていて……だけどなぜか恐怖心が湧かなかった。
面白いことに心の中は“余裕”で満たされていた。
たぶんみんなが思っただろう。
“なんだ大したことないじゃん”と。
なのに何故こんなにも疲れ、恐怖を抱き、正気が失われているのか。自分でもよく分からない。
インパクトに残っているといえば、瞬間的に真っ暗になって一気に襲われた……そんな感じしか思い出せない。
一体どんなテクニックを使ってここまで陥らせられたんだろう。不思議でならない。
「おーいみんな生きてるかー」
声のする方へ首を回す。目が合うとくしゃりと笑った都波がこちらへ向かってきた。私を見下ろす彼を見上げると今度はへにゃりと笑って頭を撫でられる。
振り払う気力はさすがに無くてされるがままにさせていると声が降ってきた。
「お疲れ。凄かったねあのお化け屋敷」
「……よく元気でいられるね。そっちの方が凄いと思う」
「元気も何も全然怖くなかったからね。俺お化け屋敷好きなんだよね」
「へー好きなんだ。意外」
「所詮人が造ったものだしね。実際のは分からないけど」
見たことないからさと笑う彼に私は胸の内で『実物は見たことあるんだよね』と密かに思った。



