――そして文化祭2日目。
10月に入ると一気に涼しくなりだした。屋外での販売の私たちにとってちょっぴり肌寒い。今日こそはジップパーカーを羽織って正解だ。
昨日はほとんど震えながらの参加で、クラスTシャツが長袖になってくれないかと願うばかりだった。楽しむより寒がる方に意識が向いていたことを思い出す。
「前半組休憩入っていーよー!――100円お預かりします、ソースは……」
実行委員の彼女が交代するよう声を掛ける。
熱気から解放されるとひんやりと気持ちのいい秋風に晒されてどこからか香ばしい香りにきゅるるとお腹が鳴った。
周りが騒がしくて良かったと胸を撫で下ろすと文香が急かすように手招きをした。
「夏澄、メイ!カレー食べに行くよっ」
勝手に走っていく背中を私たちは追いかける。屋内にあるとは限らないのにと皐月と顔を合わせ、やれやれと笑った。
屋内も人集りで大変賑わっている。それもそうだ。昨日は生徒・教師のみの文化祭――いわば私たちが楽しみ、もてなす場であったから。そして今日は日頃お世話になっている方々――地域の方、友人、家族をおもてなしする場でもあり、受験生に学校をアピールする催しでもあるため、こうしてたくさんの来客が賑わっている。
すれ違う人は私服や見たことある制服や知らない制服。まだ幼顔の男子、女子。
懐かしいと一瞬にして蘇る。私もこうして見学しに来たことを。栞那とともに。その当時もカレーを食べた気がする。
我が家とは全く違う味に2人して笑った。栞那は覚えているだろうか。その時の味も思い出も。スマホなんて持ち歩いていなかった私の記憶には沢山のあなたの笑顔や空模様、食べた数々が収まっているけれど、ハッキリとまでは思い出せない。
それでもこうして思い出せているのはカレーの匂いがあるからだ。
目の前にデカデカと掲げられている〈カレのカレーはいかが?〉という看板を目にして3人で生唾を飲む。唾液を誘発するほどのいい香りがこの階を充満しているけれど人気店なようで最後尾へ誘導された。



