――9月下旬。
夏休みが明けると校内は目まぐるしい日々が待っていた。
とうに暦は夏から秋へ移り変わっているというのに涼しくなる予兆すら感じさせない暑さの中、秋学期が始まり、あと2週間後になれば文化祭が待ち構えている。
まさに今、それの準備中なのだ。
私たちのクラスはチヂミを販売することが決定した。なぜか圧勝だった。私はお化け屋敷がよかったのだけれど、意外にも人気がなかったようで……内心悔しく思ったのは私だけの秘密。
だったはずなのに、都波には見破られてしまった。
あれからメッセージのやり取りは毎日のように続いている。バイトで疲れてすぐ寝付いちゃうことが多くて返信が遅くなってしまうことがほとんどでも彼の送ってくれる一言に日々元気づけられてた。
おはようからおやすみまで、トーク画面は都波の言葉だらけなのに私は1、2言しかなくて温度差が激しいなと思うことが度々あった。だけど私は笑っている。
家族の前では笑わないけれど、一人でいるときや今こうして友達と一緒にいるときは明らかに笑うことが増えてきた。
「なに笑ってんのっ」
「……笑ってないし」
ひょっこり視界に侵入してきた綺麗な瞳に小さく息を飲んでそっぽを向く。
少し先を歩いている3人を見た。
スーパーから頂いてきたダンボール束を重そうに背負いながら歩いている文香とそれを難なく抱えている真田くんと皐月がいる。
「少し持つよ。重いでしょ」
「大丈夫。文香の方持ってあげてよ」
「アヤはあれでいいんだよ。夏澄ちゃんのだけは持ってあげる」
「うわー酷いね」
にこやかな彼に一瞥して3人の元へ足を早めると後ろから「嫌いにならないで〜」と焦りの色を含んだ声が聞こえてくすりと笑みをこぼした。
クラスに着くと時間がある人のみが待っていた。文香は身が軽くなった瞬間近くの椅子を引っ張ってドカッと座った。それを見た皐月がいつものように叱っている。
叱るというよりは“注意”と言った方が正しいかな。
周りには男子がいるのにも関わらず足を堂々とおっぴろげでいるからで、私も近寄って口を挟む。
「そうそうもっと言ってやって」
「まあまあ、そんなことよりもさ夏澄も座ろ座ろ」
ギィィと椅子を手繰り寄せてペチペチと促す。
正直私も疲れていた。坂が多い道を歩いたせいか足はパンパンだ。運動不足だなと歩きながら思っては体力がないことを痛感した道のりだった。
だから身体は正直で。
「あー!夏澄ちゃんだけズルい」
「メイも座ればいいじゃん」
「なんで私は取りに行かなきゃいけないのさ。ったく……」
「あ、メイが拗ねたー」
ぶつくさと私たちから離れていくその背中に文香が楽しそうに笑う。私も笑った。



