「泣いたの?」
「え?」
「目がいつもより腫れぼったいから」
「……」
耳元で囁くように喋る声にゾクッしてしまう。
それよりもなんで分かるのだろう。ここら辺は街灯もないから暗くてちょっとした変化なんて分からないのに。
「今不思議に思ってるでしょ。なんでこんな暗いのに分かるんだとか思ってるでしょ?ふふふ、俺を見くびっちゃだめだよ夏澄ちゃん」
何となくこれから言われるセリフが分かった気がした。
身体が離れて私を見下ろす都波はいつになく蕩けてしまいそうな表情で視線を絡めてくる。
勝手に鼓動が飛び跳ねていく。
それからそのセリフを待っている自分に驚く。この静けさとこの胸の高鳴りがそうさせるんだきっと。
「好きだよ。夏澄ちゃんのことしか見てないからどんな小さな変化でも気付くんだよ。夏澄ちゃんが俺の事嫌いなのは認めたくないけど知ってる。でもそれだからって俺は諦めないから」
キュッと握られている両手に力が入る。
直射日光のように熱い視線が胸の高鳴りを止めさせてくれない。
「夏澄ちゃんが俺の事好きになってくれるまでとことん付きまとうから覚悟しててね」
「……いや、それは困る」
「アレ?うそっ俺なんか間違ったこと言った!?」
あまりの焦りように吹き出して笑う私を今度はきょとんと目を丸くして見てくる彼にまた笑う。
都波の前でこんなに笑うのはあの日――一緒に掃除をした日以来かもしれない。懐かしい。そして気付かせてくれた。私には笑顔ができる人だということを。
都波も私のヒーローなのかもしれない。
こうやって笑うことが出来るのも、私に友達が出来たのも、クラスの人とも少しずつだけど話すことが出来たのだって、きっかけは全て彼だった。
嫌いだけど。苦手だけど。気付けばいつも私を助けてくれてた。私のために怒ってくれたりもした。
まあ、あの時の都波はイメージと真逆で怖かったけど。それでも彼と出会わなければ今こうして笑うことも無かったのだろう。
本当に以前とは全然違うんだ。
誰かと一緒にいたり、連絡をしたり、笑ったり、泣いたり……何しても楽しくないと感じていた私がこんなにも感情を露わにするなんて夢みたいなんだよ。



