叫べ、叫べ、大きく叫べ!


「あ!夏澄ちゃん!」


私を見つけた彼――都波雅は嬉しそうに駆け寄って抱き締めようとしたところでピタリと止まった。


思考が追いつかない。
ニコニコしてる顔を見たくなくて逸らしてしまう。
なんで都波がここにいるの。


いつまで経っても脳内は“なんで”ばかりが埋め尽くされて思わず口に出してしまう。



「ふは、なんつー顔してんの夏澄ちゃん」

「いや、だって、なんで……」

「会いたかったからに決まってんじゃん」


目線を合わせるように少し身を屈ませた彼はふわりと笑う。いつもと変わらないその人懐っこい笑顔が私は嫌いだけれど、今日は感情が麻痺してしまっているのかほっとしていた。


おまけに頭を撫でてくるその手にも今はされるがままで心地いい。おかしいな。彼のことが苦手なはずなのに熱いものが込み上げてくる。


千木良くんといた時とはまた別の胸の温かさ。



「珍しいね夏澄ちゃんが嫌がらないって」

「ふ、今だけだよ。……ごめんね、急に行けなくなって。みんなに迷惑かけちゃったよね、ごめんねごめんなさい」

「誰も迷惑だなんて思ってないよ。そんなことより……」


きゅっと両手を優しく握られた。
見上げると何か言いたそうにへの字に曲げている都波がいる。
視線は上下を行ったり来たりしているその様子から私の格好に何やら不満があるのだと察知する。


案の定、口を開いた彼は言った。



「夜にこんな格好で歩くのは不注意すぎるよ夏澄ちゃん」

「……そうかな」

「そうですー。夏澄ちゃん自分がどんだけ美人で可愛いか分かってないからこう言えるんだよ。だめだよ?こんなに肌見せて外出ちゃ」


そう言って周りをキョロキョロしながら私を誰にも見せないように近づいてきた。ふわりと甘い香りと屋台を連想させる香ばしい匂いが鼻につく。


都波の鼓動がよく聞こえてきて上を向くと悪戯に笑っていて、何してるのと訴えるとさらに抱き締められている力が増した。