叫べ、叫べ、大きく叫べ!


家の屋根が見えてきた辺りで憂鬱になっていく。ため息も増えて、晴れていたはずの心も曇ってくる。


さっきの時間が夢みたいに思えてならない。プラマイゼロ。結局私の心はいつまで経っても同じまま。変えたくても変えられない。


あー……家が、どんどん近づいてくる。
歩く度に遠ざかってくれたらいいのに。
また母の顔を見ないといけないんだ。また文句を言われるかもしれない。何も言わずに家を飛び出してしまったのだから。


でも口を利きたくなかった。


なんで外に出るだけで細かい詳細を言わなきゃいけないの。
娘のことなんかどうでもいいくせに。気にしているのは栞那(かんな)だけなのだから私がどこへ行こうが勝手でしょう。


学校だってサボらせてよ。なんで皆勤賞を目指さないといけないの。体調が悪かったら休みたい。友達と楽しみたい。青春をしたい。


心の中でならいくらでも言える。被害がないから。私にしか聞こえない心の叫び。そして自己完結。毎回思う。“このままじゃいけない”って。分かってる。


けど、面と向かってはどうしても声が出なくて怖さが増大していくばかりで自分の意見を飲み込んでしまう。


そうすると、母は笑顔になる。目尻を下げて。


理解してくれてありがとうと言っているみたいで、その笑った顔を見て私はいつも安堵していた。
母の笑顔が好きだったから。


――そうだ。その顔を見たいだけに自分の気持ちを捨ててきたんだ。


もう、疲れた。母の機嫌を伺うのは。
笑顔なんてもう見せてくれないのは分かったから。


……もう、自分を解放させていいよね?


突き当たりを右折したところで俯いていた顔を上げて立ち止まった。


えっ、なんで……あんたが……。