叫べ、叫べ、大きく叫べ!


「ありがとう。ここまででいいよ。すぐそこだから」

「ん。気を付けて帰れよ」

「うん。……千木良くんもこの辺なの?家」

「いや真反対。俺ん家駅の向こう側」


今まで通って来た道を指さして言う彼に見開かせてなんでと言わんばかりに眉をひそめた。


だけど彼は至って普通な顔をしていて、そんな私にどうかしたとでも言うかのように首を傾げて口を開いた。



「こんな時間に1人で歩かすわけにはいかないだろ。なに変な顔してんの」

「変な顔って……。別に1人でも大丈夫だったのに。子どもじゃあるまいし」

「こんな格好のまま1人で帰す方が良くないと思うんだけど……」


視線が足元へ移った。私も追うようにして下を見る。


体温が急上昇した。

今の姿をすっかり忘れていて隠すようにパーカーの裾を引っ張るけれど伸びてくれなくて中途半端に止まってしまった。


部屋着姿――半袖パーカーと短パンで歩き回っていたなんて今更だけど恥ずかしくなった。恥ずかしいだけじゃない。消えてしまいたいくらいで身体中が熱くなってきているのがわかる。


こんな格好で私は……。



「なに。気付いてなかったって感じ?」

「う、うるさいっ。ちょっと黙って。恥ずかしすぎるんだから。べ、別にこんな格好でも普通にコンビニとか行くしっ」

「あっそ。じゃ、またな」


フッと鼻で笑われてさらにあたふたしてしまう私を余所に、繋がれた手が解放された。


離された手に温もりが残るけれど湿った風によって消されていく。それを阻止するように握りこぶしを作ると物足りなさを感じた。無性に彼のTシャツの裾を引っ張りたい衝動に駆られる。


寂しい。まだ帰りたくない。千木良くんとまだ一緒にいたい。


……自分から言っておいて何引き留めようとしているのだろう。


なんとか揺れる想いを奥底にしまい込んで、片腕を上げる彼に手を振る。
遠ざかる背中が小さくなるまで、今日を忘れないように目に焼きつけてから私も家へと身を翻した。