「うわ、ブレた」
「あ、ほんとだ。てか何してんの」
「何って記念?夏澄との思い出?分かんないけどなんか残したくてつい」
「残したいのは分かるけど、この手いるかな。さっき綺麗に撮れてたじゃん。あれだけでよくない?」
「はあ、分かってないな夏澄は。あれじゃ誰と一緒に居たか分からないだろ。昔誰とコレ見たっけなーってなりたくない。だからこの手が俺には必要」
わかった?と目で訴えてくる彼に笑みをこぼしてしまう。その様子に眉をひそめられるけれど、それを無視して彼の手からスマホを奪った。
目を大きくした彼を横目に繋いだ手を掲げ、画面に収め、花が咲いたその瞬間を切り取る。
私も写真を撮るのは得意な方じゃない。でも彼よりはセンスはいいかもしれない。ブレずに撮れた。今までで1番の出来なんじゃないかってくらい。思わず自分で撮った写真にうっとりしてしまいそうになる。
「お、やっぱ利き手の方が綺麗に撮れるな」
「……まぁね」
「なんだよ。あ、褒めて欲しいの?俺より綺麗に撮れてるよ良かったねありがとー」
「そんなこと言ってませんー。てか棒読み――っ」
ドクンと心臓が飛び跳ねた。
千木良くんの顔がすぐそこにあって。深い瞳に吸い込まれそうになる。
彼も彼で、驚いたように開かれていて……。
少し動いたら鼻が触れてしまいそうだ。
無意識に息を止めたと同時に時間も止まってしまった気がして、周りの環境音も打ち上がる音も遠のいて。まるでここには私と彼しかいないみたい。
でもそれは一瞬の幻。
何事もなかったかのように離れていった千木良くん。
見上げた先にはオレンジ色にチカチカと光る彼の顔があって、花火の音よりも大きく聞こえる自分の音がうるさくて……。
なんとか気を取り直そうと俯いた顔を再び空へ向けると最後と思われる輝かしい大輪が盛大にばらまかれた。



