「手繋ぐのに理由ないとダメなん?」
「いや別にダメなんて言ってな、」
「ウソ」
「ウソ!?」
「繋ぎたくなったから。ごめん急に。でももう少しだけこうさせて」
きゅっと優しく握られて、恥ずかしげに視線を逸らす彼に心に宿った芽が少し成長した気がした。
ほわりと温かくなる心には一体何が芽生えているのだろう。名前はあるのだろうか。一つだけ確かなことは、この芽は大切に育てていくべきということ。目に見えない芽を何で成長させているのかも分からない。
だけど、しっかり育てていけばとんでもないモノへ成長していくのだと私は信じてる。
いつか見違える姿に成長したその瞬間、私も――。
ドドーン
「「あ」」
大通りに出る手前、細い路地裏を通っている時に聞こえた内蔵までも轟かせる大きな音に顔を合わせて小走りにそこを抜ける。
私が先陣を切って彼の手を引くその様は、昔父の手を引いてはしゃいでいた私とリンクしているようで懐かしい。
千木良くんも同じように笑っていて嬉しくなった。
大通りへ出ると増した轟音と広がる花火に心を奪われて息が溢れる。
ふと文香たちを思い出して罪悪感と羨ましさを思い出したけれど、今は何も考えずに綺麗に咲いて儚く散っていく大輪を目に焼きつけることを優先にした。
うっとりとして小さく歓声を上げている私だけれど、この綺麗な花たちを収める物がないことに気付いてしまったその心は悔しさでいっぱいだ。
置いてきた自分が悪い。でも悔しい。
――カシャ
不意に聞こえた風景を切り取る音。
隣を見ると私がしたかったことをしている千木良くん。画面には打ち上がった種が映っていて、咲いた瞬間をしっかり収めた。
思わずいいなと零すとフッと笑ってからスマホから私へ視線が移って。
「ちゃんと後で送るつもりだから安心して見てろよ」
「そうだと思ってるよ。ありがと」
「……じゃ。ちょっと」
そう言って繋がった手を掲げた彼。
スマホは私と彼の間。画面には大きな手に絡んだ私の手が映し出されている。その向こう側に大きな花が咲いたその瞬間。
――カシャ
切り取った。



