叫べ、叫べ、大きく叫べ!


以前彼が言ったことを思い出した。

人の心を読むという隠れた才能を『気持ち悪い』と。


そう言った表情は消えてしまいそうなくらいで、月明かりまでもが切なさを漂わせてたからとても印象に残っている。



――そして今も。



「千木良くんは人間だよ。ロボットでもAIでもない。1人の人間だよ。心があるから話したいと思えるんだよ。返してくれる言葉があるからほっと出来た。気持ちを分かってくれなくてもいいんだ私。さっきみたいに傍にいて、ただ聞いてくれているだけで私は嬉しかった。だから……」


彼の視界に乱入した私を何か言いたげな顔で見つめてくるけれど、伝えたい。
彼こそそんな悲しいこと言わないで。思わないでと。



「自分をそんな苦しめないで」

「……え?」

「千木良くんの話もちゃんと聞いてあげる。一方的だと疲れるもん私だって。だから言いたくなった時でいいから、いつか私にも聞かせてね。……ま、私の話に耐えられなかった“ら”の話だけどねー」


最後は少しおどけて彼のゆく道から退けた私は再び隣を歩いた。


千木良くんが何に苦しんでいるのかはまだ分からないけれど、自分を『気持ち悪い』と言うのだから何かしら原因はあるのだと解釈する。


でもそれを強制的に引き出す力は私には無くて、そもそも誰にでもできることじゃない。


誰にだって言いたくないことはある。
隠し事をしちゃいけないだなんて一体誰が決めたの?


抱えているモノを分かち合える人がこの世界にいるなら堂々と胸張って言えるかもしれない。


でもそれはたとえ専門家でも理解できないことだったら?


知識だけじゃ足りない。経験があっても足りないことは山ほどある。


だから私は話してくれるのを待つだけにする。
もしかしたら力になれないかもしれない。
それでも“話したい”と思う日が来たその時は、彼の心に寄り添ってあげたい。