叫べ、叫べ、大きく叫べ!


夜の涼しい風が私たちの間を通り抜ける。
それでも交わる視線は熱い。



「夏澄が居なくなったら俺が悲しくなる」


瞳の色が変わった。今度は困り果てたように細められる。

肩を掴んでいる手も緩んで離れていったかと思えば、背中に回されてぎゅぅと抱きしめられた。


また彼の香りが強くなる。


頭をがっちり押さえつけられているため鼻がTシャツに押し当てられて苦しい。
自分との間にできた僅かな隙間に手を入れて押し返すけれどビクともしなくて。



「ね、ねえ」


口篭りながら呼びかけるけれど抱きしめる強さが増していくばかりでさらに苦しい。


胸板を叩いてもビクともしない彼は頭の上で深く息をついた。



「苦しい?」

「ん!ンンンン!」

「……離して欲しいって?嫌だね。夏澄のせいで俺傷ついたし。……あんなこと言わないって言うなら離してやってもいいけど」


拗ねた声。
一体どんな表情をしているのだろう。


気にはなるけれど、なにも返答しない私に呼びかけてくる彼の顎が頭を刺激してくすぐったくて、つい笑ってしまった。



「おい今笑うとこじゃないんだけど」

「あごめん。だって頭くすぐったいから」

「あ、わり」


彼は私から身を引いた。

彼の香りが弱くなってしまって少し残念に思うけれど、十分満たされたからまあ良しとする。


「ありがとう」と言えば「ん」と素っ気なく返されて、さっきまでの強引さはどこへ行ってしまったのだろうかと口元を緩めたのは秘密。