帰宅後、寝る準備が整った私は壁にかかってる物を眺めていた。
紺色が基調の浴衣には、青系の大きな花柄が散りばめられている。
文香の突然の提案で男子たちと別れ、女子水入らずでショッピングモールへ直行したのは今から2時間ほど前だ。
楽しすぎて、本当に時間が止まってしまえばいいなんて思いながら、当たり前のように過ぎていってしまったあの時間がもう懐かしくてため息をこぼす。
あの時間が恋しすぎる。
あんなにはしゃいだのはいつぶりだろうか。
今でも頬の筋肉が痛い。
でもそれすら恋しくて。
つい思い出して、笑ってしまう。
こんなに笑っているのも彼女達のおかげだと思うと都波には感謝しないといけない。
だって、私に友だちが出来たのは都波が学習室に連れてきてくれたからで。
思いがけない出会いにこんなにも仲良くなってしまったのがまだ夢見心地でならない。
私自身も変わったと思う。
『夏澄の笑った顔好きだよ』
私に浴衣を当てながら突然そう言った文香は、嬉しそうに笑っていて。
ハンガーラックの向かいにいる皐月もヒョコッと顔を覗かせて『私も~』と笑うからたまらず照れてしまった。
それと同時にほっとした。
当分笑ってこなかった私のことだから。
笑い方も忘れているんじゃないかってずっと思ってきていたし、栞那と話す時でさえ笑っているか不安で。
人に言われてはじめて気づくけれど、この頬の痛みはもっと現実的。
だから私はちゃんと笑えているんだと自信が持てるようになったかなって思いながらばたりとベッドに身を沈めた。
ふと都波の顔が浮かんだ。



