「顔赤いよ?」
「赤く、なんか……っ、そーやって都波が見てくるからじゃん」
「…………」
「な、なに黙るの」
うっすらと口を開けた彼をみて顔をしかめる。
都波のこの状態を見るとなんだか困ってしまう。
調子よかったり、怒ったり、落ち込んだり……。喜怒哀楽が激しすぎてどうすればいいのか分からなくなる。
ちょっとこの激しさが母と似ていて……。
「呼び捨て」
「はい?」
「いま、俺のこと、『都波』って」
「っ!」
理由はこれか!と言わんばかりに目を大きくして、思わず逸らした。
確かに数秒前の自分を遡ってみると呼んでいる。
嫌すぎて普段から『都波』と心の中で呼んでいるけれど、面と向かって呼ぶ時は気を付けていた『くん』があの挑発的な笑顔のせいで外れてしまったみたいだ。
頭を抱えたくなって俯くと、前の彼は上機嫌で。
「今度は下の名前で呼んで欲しいなあ」
なんて言うもんだから『言うもんか!』と思いを込めて一瞥した。
ふはっ、と笑う彼。
その眼差しが細められれば耐えられないくらいの思いが伝わってきているように思えてならない。
気のせいにしたいけれど、私もその目をよく散歩中のわんちゃんとか野良猫とか、可愛いものを見た時なんかにするから。
恥ずかしくなって握った手を見つめていると、皐月が私を呼んで注文ボタンを押した。



