その声は糸口くん。
来てから二言ぐらいしか発していなかったその声は冷静だけれど、厳しくて。
この場をも緊迫するくらい静かになった。
「さっきからおかしいよ。なにムキになってんの。自分の気持ちだけで事を進めるなよ。園田さん困ってるの分かっててやってるよな?嫌われに行ってるようなもんだよ、雅のそれ」
糸口くんはそれだけ言うとコーヒーを啜って、本の世界へと戻った。
いつの間にか都波の手は離れていて、ほっとするけれど、凍りついてしまったこの雰囲気と目の前の彼はすっかり勢威が無くなった様子に罪悪感を持った。
「あ、私また何か頼もっかなあ!」と皐月がメニューを広げると、文香も体を寄せて眺めていて。
「夏澄は?デザート何か頼む?」
「あ、うん。ティラミスにしようかな」
「おけ。剣たちは?」
皐月たちが真田くんたちに聞いている間残りわずかのカルボナーラを口に運ぶ。
未だに俯いたままの彼は、しょんぼりした子犬のようで。
なんだか申し訳ないことさせちゃったかなと後ろめたくなって、たまらず声をかけた。
呼んでもチラッと目線だけがこちらを向いて、また下を向いて……。
どうやら本当にショックを受けてしまったらしい。
でも、都波があんなことするからいけないんだよ?分かってるの?
私も私なんだろうけど。
彼がどうしても苦手で、あんな頑なに拒否しちゃったのは悪いと思ったけどさ……。
こんな姿見せられると私が悪いみたいに思えてくるじゃん。
私は最後の1口分を見つめた。



