「外回りいってきます」

 私はオフィスの中で声を上げた。


「おーい、南。悪いけどこれ、駅前のビルの中にある、ブルーショップの店長に届けてくれないか?」
 部長から茶色い封筒を渡された。


「はい。駅前の銀行にも行く予定なので大丈夫です」


「おお。気を付けてな……」


「あっ。はい」

 珍しい部長の言葉に、部長も少し驚いた顔をして首を傾げていた。


 なぜだか、篠田さんも不安そうに部長を見ていた。



 私は、いくつか外回りをすませ駅前のビルに入った。

 頼まれた封筒を渡してショップを出ると、岸田さんに偶然会った。


「南さん」
 岸田さんは笑顔で声をかけてくれた。


「岸田さんも、このビルに用事ですか?」


「うん。一緒に帰ろうか?」


「はい」

 私の顔は緩んでしまう。


「でも、部長の機嫌が悪くなるかな?」


「ええ。どうしてですか?」


「企画部ではもっぱらの噂だよ。南さん可愛いし、仕事も出来るから男性社員が声かけたいみたいだけど、部長の目が怖いって言っているよ」


「それは、何かの間違いですよ。部長は仕事になると目が厳しくなるだけです。普段はチャラチャラ、ダラダラで…… 怒りきれない……」


 私は眉間に皺を寄せて首を振った。


「じゃあ、僕、南さん食事に誘おうかな?」


「えっ」


「いい?」


「勿論です」
 目の前に銀行が見えた。


「私、銀行によるのでここで……」


「そう。じゃあ、又連絡するね」


「はい」