理想の人は明日から……


 私は、副社長のマンションの部屋のベットに座り、控え室での女子社員達の話を思い出していた。


 副社長には婚約者が居る。

 私はこのままここに居ていいのだろうか?


 副社長も心配して、そろそろ出て行け、と言えずに居るんじゃないだろうか?


 一人で眠れるようになれば、きっと安心するはず……


 私は、副社長に買ってもらった、ミッキーのぬいぐるみを抱きしめベッドにもぐった。



『トントン』部屋のドアをノックする音がした。


「南……」


 副社長の声がした。

 私は黙って寝たふりをした……


 しばらくして、副社長の足音が遠くなって行った……



 私は、溢れ出る涙に声を押し殺して目を瞑ったが、なかなか眠れなかった。




「おはようございます」

 朝食の準備が出来ると同時に、テーブルに座った副社長に元気に言った。


「おはよう……」

 なんとなく、黙って朝食を済ませた。



「南…… 今夜、大事な話があるんだ……」


「あっ。大丈夫です。荷物だいたい纏めましたから、明日休みだし…… 明日、出て行くので…… お世話になりました」

 私は明るく言うと、ペコっと頭を下げた。


「えっ。南……」


 副社長は驚いて私を見たが、私は食べた食器を流し台へと持って行き、副社長の目から外れた。