理想の人は明日から……

着替えを済ませロビーへ行くと、待ちくびれたように部長がソファーの背もたれにだらけて座っていた。


「部長! そんな座り方したら、せっかくのスーツに皺がつくじゃないですか!」

 私は思わず声を上げてしまった。


「ああ、はい、はい。着替えに時間がかかりすぎるからさぁ……」


 部長は口を尖らせて言った。


「もう、これからは副社長ですよ! 誰が見ているか分からないんですから!」


「はい、はい」


「そうか…… これからは。副社長って呼ばなきゃ……」


「いいよ、どっちでも、チャラ部長じゃなきゃね」
 
 副社長はチラッと私を見た。

「ああ。じゃあ、今度からチャラ副社長ですね!」


 副社長は嬉しそうに笑った。


「良かった。南が元気で、変わらなくて……」


「えっ」


「こっちの話。それより、何か食べて帰ろう」


「はい、私も何も食べれなかったから、お腹すいた――」


「あはははっ」


 副社長は、笑いながら私と並んで歩いた。